厚紙ベースに、トンボも自作!
ナマぴ~
お、おじさん!
かみの…、紙の「はんした」ってなに!
ナマ叔父さん
おいおい、誰かと思ったら
ナマぴ~くんじゃないか。
故郷の密林村じゃなく、サバンナの大都会でデザインの学校に進学するって聞いたから、そろそろココへ顔を出す頃だと思ってたよ。学生生活はどうだい?
おや、なんだか顔色が悪そうだね。ナマケモノなんだから、あんまり走ると体に悪いよ。
客間にね、ぶら下がり具合のいい木があるけど。少し寝てくかい?
ナマぴ~
あっ、い、いまは大丈夫。
それよりおじさんさぁ、クリエイター歴長いでしょ? 制作会社の社長もやってたし。
ねぇ、紙で「はんした」作る方法って知ってる? 叔父さんなら詳しいかと思って。
ナマ叔父さん
ナマぴ~
いや…、違うんだよおじさん。
春からデザイン学校に行くって言ってたけど、実は就職しちゃったんだ。出版社なんだけどね。
「取材ライター 兼 デザイナー募集」って言うのを求人サイトで見つけてさ、応募したら採用されちゃって。えへへ…。初出社はまだなんだけど。
ナマ叔父さん
就職したのかい、
そうかそうか、おめでとう。
ライターやデザイナーは専門職で身につけないといけないスキルが多いから、学校で学んだほうがしっかり基礎ができて就職に有利って言われるけど…。
おじさんはね、いい求人があれば就職しちゃうのも「あり」かなあって思ってたんだよ。業界の活きた経験が早く積めるから。
でもそうなると、デザインやソフトなどの扱いは自分で勉強したり、先輩から習うことになるから学校と違って苦労するかもしれないよ。でも実践に沿ったスキルが身に付くのが強みだね。
それと、身に着けるスキルは会社の業務や環境が大きく影響するかもしれないね。それでさ、もしかしたら入社後すぐに実戦投入されちゃうかも知れないよ。でさ、学校行ってた子が卒業する頃、君はバンバン仕事の実績上げてたりしてね。
そんな子ウチの会社にもいたよ何人か。でもラフスケッチ描かせたら美大卒のデザイナーにはかなわなかったけどね…。
それで…、ええっと、何だっけ?
ナマぴ~
あ、ありがとうおじさん。
あのー、はんしたの話。
ナマ叔父さん
そうそう版下。それも紙の版下だろ? 何度も作ったことあるよ。おじさんぐらい長くグラフィック業界にいる連中なら一度は見たことがあるはずだよ。
ベースは厚紙、ケント紙だったかなぁ。表面がツルッとしてて、そこに文字を貼ったり罫線を描いたりしてね。そうそうトンボも自作したもんだよ。
トンボって聞いたことないかい? DTPソフトで言う「トリムマーク」のことだよ。これがねぇ、手描きとなると結構曲がったり歪んだりするんだよ。トンボがしっかり作れないと一人前と言われなくてね…。まあ、デジタルが主流の今じゃ、紙の版下なんてもう見ないけど。
まさか就職した会社、紙の版下作ってるんじゃあないだろうね? 今度持ってきてよ。いや、懐かしいなぁ~。
ナマぴ~
たぶん、今度作ると思うんだけどさ、
持ってこれないよ。
だって、作るとしたら
僕が見た夢ん中だもん。
ナマ叔父さん
はぁ? どう言うことだい。
毎晩続きを見る!? 不思議な夢
ナマぴ~
僕ね、最近変な夢見るんだ。
それが必ずグラフィック業界で働いてる夢なんだ。
最初に見たのは、会社の面接を受けた日の夜だったんだけど、その日は緊張してたから見たんだろうって思ってたんだ。そしたら次の夜も同じ夢を見たの。
入社した出版社とは全然違う会社の夢で、働いてるのは、もちろん会ったことないメンバーばかり。でもね、夢の内容はいつも前の夢の続きでさ、そして次の夜もまた続くんだ。
最初は連ドラ観てるみたいで楽しかったんだけど、毎晩、続きの夢を見るなんてさすがにちょっと…。なんだか怖くなっちゃって。
ナマ叔父さん
そんなことあるのかい。ずいぶんと珍しい現象だね。まあ、君は昔から神経質なところがあるから、慣れない生活環境がストレスになっているのかもしれないね。
そうだ、気分転換にやっぱりウチで寝てくかい? マッサージ機能付きのナマケモノ専用、最新型「ぶら下がりツリー」もあるけど。これがねぇ、とっても気持ちいいんだ。
…ああ、ごめんごめん。また話がそれちゃったね。
君の不思議な夢の話は分かったけど、その夢と版下がどう関係するんだい?
ナマぴ~
実は、昨日の夢なんだけど…。
●ナマぴ~の回想(場所は不明)
とある版下制作現場で、女性デザイナー「やまねこコナツ」氏と
ええっとナマケモノの「ナマぴ」さんね。初めまして。やまねこコナツです、よろしくねー。
えっ、「ぴい」なの? 違う、「ぴいー」? 「い」がなくてにょろにょろの「~」…。あぁん、もう「ナマちゃん」でいいや。 ナマちゃんはライター志望でウチの出版社に入ったんですって? ウチはね、ライターはデザイナーも兼用するのよぉ。
デザインもやりたかった。あらそう、ちょうどよかったじゃない。取材して原稿書いたら誌面デザインをして、写植指定とレイアウト指示書を付けて制作へまわす仕組みなのよ。
で、レイアウトに沿って版下を組むのがここ制作部。入社したら現場からって言うでしょ。新入社員は必ず版下から経験することになってるの。
それにね、将来、デザイナー目指すんだったら版下知ってて損はないわよ。デザインだけじゃなく、印刷入稿まで一人で出来ちゃうんだから。
えっ、 ぱそこん…って、あんた。最近海外で出たマイコンのこと言ってるの? あははは、そんな高価な事務機器、この会社にあるわけないじゃない。なにそんなに不思議そうな顔してるの。
じゃあさっそく始める?
版下台紙作ってもらおっか。そうねぇ、カッターと紙ヤスリはそこにあるから、まず鉛筆削って。
ナマ叔父さん
な、なんだって!
で、削ったのかい、鉛筆。
ナマぴ~
削り始めたら目が覚めた。
ナマ叔父さん
ナマぴ~くんは、紙の版下なんて作ったことないんだよね? その制作部って、本当はパソコンがあるけど、新入社員に苦労を知ってもらうために紙の版下を作らされるんじゃないのかい?
ナマぴ~
ううん、「パイナップル社の、モッキントッシュないの?」って言ったらさ、聞いたことはあるけど、最近海外で作られた「まいこん…」のこと?ㅤって言ってた。この国にはまだないって。
ナマ叔父さん
なんだか妙にリアルな夢だね、しかも時代が何十年も昔だよ。
うーむ、まさかと思うけど…。
いいかい、ナマぴ~くん。ひとつ聞くけど、削り始めた鉛筆の硬さは覚えてるかい? 2BとかHBとかあるだろ。
ナマぴ~
4Hばかりだったよ。カッターで削るとき硬かったから記号を見たんだ。何に使うんだろうあんなに硬い鉛筆?
それにさ、今度は紙やすりで平たくなるまで芯を研げって言うし、その辺で目が覚めたんだ。
ナマ叔父さん
なにっ、4Hの鉛筆の芯を、芯を平たく削れって…。
確かにそう言ったんだね!
※ 紙の版下って何? 02【A4の奥さん、布団は拭くな】へつづく